着物の職人「和裁士」とは?仕事・求人内容を紹介

着物の職人「和裁士」とは?仕事・求人内容を紹介

和裁士は、一から着物を仕立て上げる職人です。
着物が好きな方、裁縫などの針仕事が得意な方にとって、気になる和裁士の仕事。

この記事では、「和裁士」という仕事に迫ります。
合わせて、和裁士の働き方や和裁士のこれからについても解説していきます。

和裁の仕事に興味がある方に役立つ内容を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

和裁の仕事とは

和裁士は、主に呉服店や個人顧客から依頼を受け、和服の仕立てやお直しを行います。

着物は、一枚の長い布である反物から着用する方の体型や用途に合わせて採寸を行い、柄合わせ・生地の裁断・縫製をしていきます。

そのほとんどが、職人による手縫いで仕上げられ、和裁士の確かな技術が求められます。

和裁士になるためには?

和裁を学ぶためには幾つかの方法があります。和裁士のキャリアパスを解説します。

大学・短大・専門学校で学ぶ

和裁を学ぶため最も一般的なのは、服飾関連の大学・短大・専門学校に通い、和裁の知識と技術を学ぶことです。

和裁関連の資格取得に有利な学校や、全国から入学生を受け入れるため学生寮を完備する学校、就職支援や独立後の仕事の受け渡しといった卒業後のサポートに手厚い学校など、各学校によってさまざまな特色があります。

また、学校に通った年数が実務経験年数同等に認められています。

職業訓練施設で学ぶ

職業訓練施設で基礎的な技能を学んでから就職するという道があります。
職業訓練施設では、1〜2年和裁技術を学ぶことができます。

各都道府県によって詳細は異なりますが、例えば東京都の場合、都立の職業能力開発センターで、和裁知識や縫製技能を修得することができます。

都道府県が職業訓練校として、民間の専門学校に委託し、就職に向けた訓練を実施している場合もあります。

和裁所に就職する

和裁所や和裁製作所、仕立て屋に見習いとして就職する道もあるでしょう。

和裁初心者や見習い生を募集している和裁所では、和裁士育成のため技術指導を行っています。

見習い生であっても給与を受け取ることができ、見習い期間が終わった後、社員として就職することも可能です。

和裁士に資格は必要?

和裁の仕事に就くために必須となる資格はありません。

ただし、資格を持っていることで技術力を有していることの証明になり、資格取得を採用の条件にしている求人もあります。

和裁に関連する資格は2種類あり、それぞれ解説します。

和裁技能士

和裁に関する資格の唯一の国家資格です。

3級・2級・1級まであり、2級からは実務経験が必要になります。

プロとして認められるのは2級以上であり、「和裁技能士2級以上の資格取得者」を必須の応募条件とする求人もあります。

和裁の資格の中でも最難関である1級取得は、相応の努力の他、指導者に恵まれることも必要になってくるでしょう。

技術力を可視化できるので、和裁技能士○級取得者○名在籍とアピールする和裁所もあり、プロ和裁士として活躍するためには、取得しておきたい資格だと言えます。

和裁検定試験

「全国和裁着装団体連合会」・「東京商工会議所」が共催。

和裁検定は、4級から1級まであり、それぞれ下記を証明できる内容となっています。

  • 4級:初歩的な実技と理論を修得していること
  • 3級:基本的な実技と理論
  • 2級:職業としての実技と理論
  • 1級:職業としての更に高度な実技を有し、理論全般について精通していること

1級では、女子用袷長着を試験時間約8時間30分で縫製しなければいけません。
技術はもちろんのこと、縫製の速さも要求されるので資格取得の難易度が上がります。

(参照:2022年度 第65回 和裁検定試験 受験案内

和裁士として働くには?

和裁士としての働き方や給料体系について解説します。

和裁所などに就職する場合

和裁士の求人は、主に和裁所か仕立て店です。

その多くが見習い・弟子入りから始め一人前になった後、社員になるケースが一般的です。

給料体系は、一定の固定給が支払われる月給制よりも、雇用形態に関わらず時給制もしくは日給制の他、手掛けた分だけ給料が支給される完全出来高制が多く採用されています。

フリーランスの場合

企業に所属せず、フリーランスとして活動するパターンもあります。

和裁の仕事は、生地の裁断から縫製、仕上げまで、畳み2畳ほどあればできるので、在宅ワークでの求人が多い点も特徴の一つです。

もともと、自宅で女性が日常的に行なっていたと言われる着物のお仕立て。
現在も、和裁の仕事の多くは自宅で行われています。

例えば、自宅で家事や子育てをしながら和裁をすることもできるでしょう。

遠方の場合、反物を郵送で送ってもらい、自宅で仕立て、完成した着物を返送・納品するといった働き方もあります。

このように、自分のペースでライフスタイルに合わせた働き方ができます。

フリーランスで働く場合も給料は、仕立てた内容と仕立てた枚数によって給料が支払われる完全出来高制が用いられています。

和裁業界の動向と今後の見通し

和裁業界の現状と和裁士の将来性について解説します。

国産・手縫いの価値が見直されている

低価格な海外縫製が増えたことにより、国内縫製のシェアが減少しました。
国内の仕立て市場は、半分以下になっているとも言われています。

加えて、職人の手縫いで行われてきた仕立ても、安価な着物を中心にミシン縫製の割合が増加。
日本の職人による手縫いでの仕立ては、激減しているのが実情です。

だからこそ希少価値が高まり、価値が再評価されています。

和裁業界全体で人材育成に取り組んでいる

技術を持つ職人の高齢化に伴い、和裁士の人口が減少している昨今、和裁士の養成が急務です。

日本の伝統的な和裁技術を受け継ぎ、新たな実力を有する若手の和裁士が必要とされています。

和裁業界全体で和裁士の育成に注力し、各企業努力によって、時代に即した新しい取り組みが行われています。

着物の価値観が変化している

和裁士は、着物を新しく仕立てるだけではなく、着物の仕立て直しも行います。

古い着物も仕立て直すことで、世代を超えて長く着用できます。

お母様の振袖をお嬢様が着用するママ振袖を筆頭に、着物の活用の仕方も見直されています。

ママ振袖が支持されている理由の一つに、祖母や母親から振袖を受け継ぐことによる家族間のストーリー体験、共有体験に付加価値があるからではないでしょうか。

消費者の消費行動や価値観は時代と共に変化しています。

モノの所有を重視する「モノ消費」から、消費を通じて得られる一連の体験や経験に価値を置く「コト消費」にシフトしました。

そして、Z世代と呼ばれる年齢層を中心に、消費を通じて社会や環境に貢献し、社会的な価値や文化的な価値を重視する「イミ消費」に変遷しつつあります。

モノの消費の価値観が変わることで、着物に対する価値観も時代と共に変わってきています。

まとめ

和裁士を取り巻く環境は決して明るい話しばかりではありませんが、歴史や文化を伝承することに価値を感じる若い世代が増加しています。

和裁士に求められる需要も時代と共に変化していくことでしょう。

この記事が、和裁士の仕事への理解を深め、興味を持つきっかけになれたら幸いです。

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